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突然の激しい腹痛と粘血便…「大丈夫」と思わないで、早めの受診が大切な理由

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突然の激しい腹痛と粘血便…「大丈夫」と思わないで、早めの受診が大切な理由

 

「突然の激しい腹痛と、止まらない下痢。しかも血が混じっている…」

そんな経験、できればしたくないですよね。でも、もし自分や大切な人がそんな状況になったら、どうすれば良いのでしょうか?

 

今回は、当クリニックに実際に来院された20代女性、佐藤さん(仮名)のケースをご紹介しながら、急な腹痛や下痢、特に粘血便があった場合に知っておいていただきたい大切なことをお伝えします。

 

辛い症状で来院された佐藤さん

佐藤さんが来院されたのは、ある日の午前中のことでした。前日から、10回近い突然の下痢に襲われ、特に辛かったのは、粘り気のある便に血が混じる「粘血便」だったそうです。さらに、かなり強い下腹部の痛みがあり、その痛みは「うずくまるような、動けない」ほど激しいものだったと言います。ご本人にとっても、今まで経験したことがないほどの辛い状況でした。

最も辛い症状は腹痛でした。

 

なぜ「大腸カメラ」が必要と判断されたのか?

問診で佐藤さんの症状を詳しく伺った小田木医師は、佐藤さんが20代の若い女性であること、そして粘血便と強い下腹部痛があることから、いくつかの病気を可能性として考えました。

まず考えられるのは、食あたりなどによる「感染性腸炎」です。これは、病原菌などが原因で腸に炎症が起きる病気です。しかし、20代の若い方の場合、「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」といった「炎症性腸疾患」を発症している可能性も十分に考えられます。これらの病気は、国の指定難病でもあり、早期に適切な診断と治療を開始することが非常に重要です。

 

佐藤さんの場合、特に下腹部の痛みがあり、さらに下痢や粘血便を伴っていたことから、胃ではなく大腸に原因がある可能性が高いと判断されました。お腹の痛む場所によって、原因が胃なのか大腸なのか、ある程度判断ができるのです。みぞおちなど上腹部の痛みは胃カメラの対象になることが多いですが、下腹部痛は原則として大腸カメラの対象となります。

そして、感染性腸炎なのか、それとも潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患なのかを正確に診断するために、精密検査、具体的には「大腸カメラ」が必要だと判断されたのです。

 

23歳で大腸カメラ…検査に踏み切った理由

小田木医師から大腸カメラ検査の提案を受けた佐藤さん。23歳という若さで大腸カメラと聞き、抵抗があったのではないかと思われましたが、佐藤さんは症状があまりにも辛かったため、「しっかりと診断をしてほしい、治療につなげてほしい」という気持ちが強く、検査を強く希望されました。

通常、大腸カメラ検査の前には、検査用の食事を食べたり、前日の夕食から絶食したりといった準備が必要です。佐藤さんは前日から症状が強く、ほとんど食事が摂れていない状況だったため、当日にある程度の下剤を飲んでいただくことで、当日の検査が可能となりました。

 

検査で分かったこと、そして診断へ

実際の大腸カメラ検査で分かったのは、驚くべきことでした。大腸の入り口である盲腸から出口の直腸まで、大腸のほぼ全体にわたって、広範囲に粘膜がただれているような所見が見られたのです。

内視鏡で観察した時の印象としては、感染性腸炎の可能性が高いと考えられました。しかし、潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患である可能性も完全には否定できない状況でした。

 

 

そこで、より正確な診断のために、炎症が見られた部分の粘膜を採取する「生検検査」や、腸液を採取して病原菌がいるかどうかを調べる「培養検査」が行われました。

ただし、培養検査の結果が出るまでには、5日から1週間程度かかるため、結果を待っている間に症状が悪化しないよう、まずは感染性腸炎を強く疑って治療を開始することになりました。

 

治療の開始と劇的な回復

感染性腸炎が疑われる場合、原因となっている細菌に対して抗生物質を使用します。佐藤さんも、当日から点滴で抗生物質の投与が開始され、その後は内服薬での治療へと移行しました。

治療を開始すると、佐藤さんの症状は日に日に改善していきました。抗生物質が非常によく効き、みるみるうちに良くなっていったのです。

そして数日後、依頼していた腸液の培養検査の結果が届きました。結果は、**病原性大腸菌である「O157」が検出されたとのことでした。この結果と、抗生物質が劇的に効いて症状が改善したという経過から、佐藤さんの病気は「病原性大腸菌O157による感染性腸炎」であったと最終的に診断されました。

 

もし検査をしていなかったら?

ここで、「結局、抗生物質で治ったなら、大腸カメラをする必要はなかったのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、小田木医師は次のように説明しています。佐藤さんのような、急な粘血便や強い腹痛という症状は、今回のように感染性腸炎の場合もあれば、潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患の場合もあるのです。そして、もし潰瘍性大腸炎だった場合、抗生物質は効果がありません。症状だけでどちらかを判断することは難しく、経過を数日見てから判断することも可能ではありますが、今回の佐藤さんのように、検査で大腸の広範囲に炎症があるという所見をしっかりと確認できたことで、感染性腸炎の可能性が高いとより自信を持って判断し、適切な治療である抗生物質の投与に速やかに繋げることができたのです。

症状の辛さに加え、検査結果という客観的な情報があったからこそ、迅速かつ的確な治療を開始でき、早期回復に繋がったと言えるでしょう。

 

もし「急な腹痛と粘血便」があったら…

佐藤さんのケースのように、急に始まる粘血便やきつい腹痛という症状の場合、食あたりなどの感染性腸炎か、若い方でも発症しうる炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)の可能性が大きく考えられます。

どちらの病気であったとしても、できるだけ早く医療機関を受診し、必要に応じて大腸の検査を受けることが大切です。23歳という若さでも、今回のように重篤な菌による感染症や、炎症性腸疾患の可能性も十分にあります

「いつものことだろう」「時間が経てば治るだろう」と自己判断せず、いつもと違う辛い症状が出た場合は、ぜひ消化器内科にご相談ください。早期の受診と適切な検査が、正確な診断と早期回復への第一歩となります。

 

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