「またお腹が痛い…、
そして止まらない下痢」
こんな悩みを抱えていませんか?特に、特定の食事の後や、仕事でストレスを感じた時に症状が出やすいという方。
もしかしたら、「いつものことだから」「自分の体質だから仕方ない」と諦めてしまっているかもしれません。
今回ご紹介するのは、当クリニックを受診された40代の男性、田中さん(仮名)のケースです。田中さんも、長年にわたり、ある「悩み」を抱えていらっしゃいました。
長年の「条件付き」下痢と腹痛
田中さんが当クリニックを受診されたのは、「下痢しやすい」というお悩みからでした。特に、年末年始の忘年会で暴飲暴食をしたり、宴会が続いたり、重い食事を摂ったりすると、確実に下痢をしてしまう。さらに、お腹が痛くなる症状にも悩まされていました。
この症状は、最近始まったものではなく、元々そういう傾向をお持ちだったそうです。まさに、特定の条件(食事の負荷や仕事上のストレス)を満たした時に下痢や腹痛が出る、というパターンでした。
ご自身でもある程度、自分の消化器系の異常の性格やキャラクターは把握していた田中さんでしたが、この時は特に症状が強く出て、すぐに下痢しやすいといったことがあったため、心配になって受診されたそうです。
「ただの体質?」それとも…
小田木医師が考えた可能性
田中さんの症状を詳しく伺った小田木医師は、まず、このような症状の流れは「過敏性腸症候群(IBS)」という病気の典型的なパターンであると考えました。過敏性腸症候群は、検査をしても炎症や潰瘍などの異常が見つからないにも関わらず、お腹の痛みや下痢、便秘といった症状が慢性的に続く病気です。
しかし、小田木医師はそれだけで終わらせませんでした。
田中さんのような症状の中には、「炎症性腸疾患」のような病的なものも含まれている可能性があると考えたのです。炎症性腸疾患とは、潰瘍性大腸炎やクローン病といった、腸に慢性の炎症が起きる病気で、適切な診断と治療が必要です。
また、田中さんは40代でした。最後に大腸カメラ検査を受けたのは4年以前で、その時は異常はなかったそうですが、4〜5年空いていたため、「しっかり評価をお勧めしたい」という考えから、小田木医師は大腸カメラ検査を提案しました。
検査で明らかになった
「意外なもの」
田中さんは小田木医師の勧めを受け、大腸カメラ検査を受けることにされました。
そして検査の結果、意外なことが分かりました。田中さんの腸の粘膜は非常に綺麗で、小田木医師が懸念していた潰瘍性大腸炎やクローン病を疑うような炎症の所見は、特にありませんでした。内視鏡で見る画像も「綺麗だなと思える画像」だったそうです。
症状の原因は、やはり過敏性腸症候群の下痢型である可能性が高いと診断されました。
しかし、ここで一つ別のものが見つかりました。それは、「通常のポリープ」です。このポリープは、田中さんの症状とは直接関係のない偶発的な発見でしたが、大きくなると癌につながる可能性のある「腺腫(せんしゅ)」検査当日に切除されました。
診断を受けて、田中さんは…
検査結果と診断を聞いた田中さんは、「そういう(過敏性腸症候群)なら、まあ良かった」と感じられたそうです。特に、癌であったり、潰瘍性大腸炎のような病気が見つからなくて、「安心できた」と話されました。
小田木医師によると、過敏性腸症候群の症状の重さは人によって様々で、かなり日常生活に影響を及ぼす方もいれば、そうでない方もいます。田中さんの場合は、比較的軽度から、時々少し中等度になるくらいの重さでした。
治療としては、まず内服薬をしばらく服用して症状をある程度コントロールし、その後は、負荷がかかった時だけ薬を飲むなど、症状に合わせてコントロールできる時期もあったそうです。もし下痢によって生活パターンを変えたり、食事制限を受けたりするような状況がある場合は、適切な薬物治療だけでなく、生活習慣の管理も必要になります。
「いつものこと」と
諦めている方へ伝えたいこと
田中さんのように、慢性的な下痢や腹痛に悩まされ、「これは体質だから」「ストレスだから仕方ない」と考えて医療機関の受診をためらっている方は、非常に多いと思います。
確かに、多くの場合は過敏性腸症候群かもしれません。しかし、今回の田中さんのケースからも分かるように、受診と検査をすることで、以下の点が明らかになります。
1.重篤な病気の除外
症状が似ていても、潰瘍性大腸炎やクローン病のような病的な原因が隠れている可能性を確実に否定できます。
2.正確な診断
適切な診断を受けることで、過敏性腸症候群であっても、症状に合った治療法(薬や生活習慣の改善など)を知ることができます。症状の程度によっては、薬でコントロールすることも可能です。
3.偶発的な病気の発見
症状とは関係なく、将来的に癌になる可能性のあるポリープなどが発見されることがあります。早期に発見し切除することで、癌になるのを防ぐことができます。
特に、30代後半から40代にかけての年代の方は、慢性的なお腹の症状がある場合は、「いつものこと」と自己判断せずに、一度大腸の検査を受けて、しっかり評価をしてもらうことが非常に大切です。
田中さんも、長年の悩みの原因が分かり、安心するとともに、将来的な病気のリスクであるポリープも取り除くことができました。
「いつものこと」と諦めずに、一度専門医にご相談ください。
あなたの「長年の悩み」が、検査で解決したり、安心に繋がったりするかもしれません。